請負契約書とは?書くべき内容・必要な項目・注意点をわかりやすく解説

「請負契約書を作りたいけれど、何を書けばよいのだろう?」 
「インターネット上の雛形(テンプレート)をそのまま使って、後からトラブルにならないだろうか?」

このような不安を抱えているフリーランスの方や、中小企業の経営者・担当者の方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、請負契約書で最も重要なのは、

  • 何をもって仕事の完成とするのか
  • トラブルが発生した場合のルール

を事前に明確にしておくことです。

これらが曖昧なままだと、

「完成したはずなのに代金が支払われない」
「想定外の追加作業や修正対応を求められる」
「納品後の不具合について責任範囲で揉める」

といったトラブルにつながる可能性があります。

この記事でわかること

  • 請負契約書で特に重要な9つのポイント
  • 納期遅延や代金未払いなどのトラブルを防ぐための考え方
  • 発注者・受注者それぞれの立場で確認しておきたいチェックポイント
  • テンプレートを利用する際の注意点

この記事を読むことで、雛形をそのまま流用するリスクを避け、自社の取引内容に合った請負契約書を作成・確認するための基礎知識を身につけることができます。

目次

請負契約とは? 準委任契約との違いを解説

ビジネスで業務を外部へ委託するときによく利用される契約形態の一つが「請負契約」です。

請負契約では、受注者は仕事を完成させる義務を負うため、契約書の内容が非常に重要になります。

まずは、請負契約の基本的な仕組みと、混同されやすい準委任契約との違いを確認していきましょう。

1. 請負契約の定義|重要なのは「仕事の完成」

請負契約とは、以下のとおり、民法第632条で定められている契約です。

「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」

簡単に言えば、

  • 発注者は「仕事の完成」に対して報酬を支払う
  • 受注者は「仕事を完成させる義務」を負う

契約です。

請負契約の最大の特徴は、

契約で定められた成果物や仕事を完成させること

が求められる点にあります。

請負契約の具体例

請負契約が利用される代表的な例として、以下のようなものがあります。

  • ホームページ制作(完成したWebサイトの納品)
  • システム・アプリ開発(完成したシステムの納品)
  • ロゴやパンフレットのデザイン制作
  • 動画制作
  • 建築工事やリフォーム工事

このように、成果物や完成した状態が明確な業務は、請負契約との相性が良いといえます。

2. 準委任契約との違い

請負契約と混同されやすい契約として、「準委任契約」があります。

両者の最も大きな違いは、

「仕事の完成を目的とするか」それとも「業務を適切に遂行することを目的とするか」という点です。

  • 請負契約:仕事の完成(成果物の完成)を目的とする契約
  • 準委任契約:業務を適切に遂行することを目的とする契約

この違いにより、契約上の義務の内容が異なります。

項目請負契約準委任契約
契約の目的 仕事の完成(成果物の納品)業務の適切な遂行
責任の内容完成義務・契約不適合責任 善管注意義務(適切に業務を行う義務)
報酬の考え方 成果物の完成に対して発生することが多い 業務の遂行に対して発生することが多い(時間・月額・成果など様々)
検収必要になることが多い検収という形式は少ないが、業務報告や成果確認は行われることが多い
主な例Web制作、システム開発、工事コンサルティング、顧問契約、SNS運用代行、事務代行
中途解約条件や損害賠償が問題となることがある原則として解除可能。相手方に不利益が生じる場合は損害賠償が問題となることも。

例えば、ホームページ制作を依頼する場合、

  • 「完成したホームページを納品してもらう」のであれば請負契約
  • 「毎月一定時間、ホームページの更新や保守作業を行ってもらう」のであれば準委任契約

として扱われることが一般的です。

契約書のタイトルが「業務委託契約書」となっていても、それだけで請負契約か準委任契約かが決まるわけではありません。
実際には、契約内容から、成果物の完成を目的とする契約なのか、それとも業務の遂行そのものを目的とする契約なのかによって判断されます。
そのため、契約書を作成する際は、まず契約の目的と性質を明確にしたうえで内容を設計することが重要です。

請負契約では契約書の内容が特に重要になる

請負契約では、受注者が「仕事を完成させる義務」を負うため、以下の事項を事前に明確にしておく必要があります。

  • 何をもって完成とするのか
  • いつまでに納品するのか
  • 修正対応はどこまで行うのか
  • 納品後に不具合が見つかった場合はどうするのか、など

これらを曖昧なまま契約すると、納期遅延や品質をめぐるトラブル、報酬の支払いをめぐるトラブルにつながる可能性があります

請負契約書で特に重要な9つのポイント

請負契約では「成果物の完成」を目的とするため、契約書では特に“完成物の定義”と“完成に至るまでの運用ルール”、そして“完成後の責任関係”を明確にすることが重要です。

以下では、実務上特にトラブルになりやすい論点を3つの視点に分けて整理します。

成果物の定義系(完成の基準を明確にする)

① 成果物の定義(何をもって完成とするか)

請負契約の最も重要なポイントです。

請負契約では、「仕事が完成したかどうか」が報酬の支払いや契約不適合責任などに大きく関わります

完成の基準が曖昧なまま契約すると、「まだ完成していない」「すでに完成している」と当事者間で認識が食い違い、トラブルになるおそれがあります。

契約書では、次のような事項を明確にしておくことが重要です。

  • どの状態をもって「完成」とするか
  • 成果物の到達基準(機能・品質・状態)
条文例

(業務の完了)
第◯条 本業務の成果物は、発注者による検収合格をもって完成とする。

② 成果物の仕様

成果物の具体的な内容や品質を定める項目です。

仕様が曖昧だと、「依頼した内容と違う」「そこまで対応する契約ではない」といった認識のズレが生じやすくなります。

そのため、成果物の内容をできるだけ具体的に定めることが重要です。

契約書では、例えば次のような事項を整理します。

  • デザイン・機能・構成要素
  • ページ数や構造
  • 要件定義との整合性

※実務では仕様書や発注書で詳細化することが一般的です。

条文例

(仕様)
第◯条 本業務の成果物の仕様は、別紙仕様書に定めるとおりとする。

③ 納期・納品方法

成果物をいつ、どのような方法で納品するかを定める項目です。

納期や納品方法が曖昧だと、「納品が遅れた」「納品したつもりだった」といったトラブルにつながることがあります。

特にオンラインで成果物を納品する場合は、納品完了の時点を明確にしておくことが重要です。

契約書では、例えば次のような事項を定めます。

  • 納品期限
  • 納品形式(データ・現物・サーバーアップ等)
  • 納品完了の定義
条文例

(納品)
第◯条 乙は、令和◯年◯月◯日までに成果物を甲に納品するものとする。
2 納品方法は電子データの送付によるものとする。

運用のルール(納品・修正・変更)

④ 検収(受け入れ確認)

検収とは、納品された成果物が契約内容どおりに完成しているかを発注者が確認し、受け入れる手続きです。

検収のルールが曖昧だと、「いつ完成したことになるのか」「いつ報酬を支払うのか」をめぐってトラブルになることがあります。

そのため、契約書では次のような事項を明確にしておくことが重要です。

  • 検収期間の設定
  • 検収方法
  • 修正依頼の扱い
  • みなし検収の有無

みなし検収とは、発注者が一定期間内に検収結果を通知しなかった場合、自動的に検収に合格したものと扱う仕組みです。(以下の条文例の「2」がそれに該当します。)

条文例

(検収)
第◯条 甲は納品後◯日以内に検収を行い、合格の場合はその旨を乙に通知する。
2 期間内に通知がない場合は、検収に合格したものとみなす。

⑤ 修正対応の範囲

実務で最もトラブルになりやすい項目の一つです。

修正対応の範囲を定めていないと、発注者から何度も修正を求められたり、受注者が想定以上の作業を無償で行うことになったりするおそれがあります。

契約書では、例えば次のような事項を定めます。

  • 無料修正の回数・範囲
  • 軽微修正と大幅修正の区分
  • 追加費用が発生する条件
条文例

(修正)
第◯条 乙は、軽微な修正については無償で対応するものとする。
2 前項以外の修正については、別途協議のうえ対応する。

⑥ 仕様変更・追加業務の取扱い

契約締結後に仕様変更や追加業務が発生した場合のルールを定める項目です。

制作や開発では、契約後に要望が変わることも少なくありません。

変更手続きや追加費用を定めておかないと、「追加料金が発生するとは思わなかった」といったトラブルにつながる可能性があります。

  • 変更の手続き方法
  • 追加費用の算定方法
  • 納期への影響の扱い
条文例

(変更)
第◯条 本業務の内容に変更が生じる場合、甲乙協議のうえ書面により合意するものとする。
2 当該変更により追加費用が発生する場合、甲はこれを負担する。

リスク管理(責任・権利・終了)

⑦ 契約不適合責任

納品した成果物が契約内容に適合していなかった場合の責任を定める項目です。

不具合や仕様との不一致が見つかった場合に、受注者がどこまで対応するのかを明確にしておかないと、責任範囲をめぐるトラブルにつながることがあります。

契約書では、例えば次のような事項を定めます。

  • 修補(修正)対応
  • 代金減額・損害賠償
  • 責任期間(いつまで責任を負うか)
条文例

(契約不適合責任)
第◯条 成果物に契約内容との不一致がある場合、甲は乙に対し修補を請求することができる。

⑧ 知的財産権(著作権等)

成果物の権利関係を明確にする重要な条項です。

著作権の帰属を定めていないと、「誰が自由に利用できるのか」「受注者がポートフォリオに掲載できるのか」などをめぐって争いになることがあります。

契約書では、例えば次のような事項を定めます。

  • 著作権の帰属(譲渡か留保か)
  • 二次利用の可否
  • 素材・成果物の扱い
条文例

(著作権)
第◯条 本業務の成果物に関する著作権は、代金支払完了をもって甲に移転するものとする。

⑨ 中途終了時の精算

契約が途中で終了した場合の取扱いを定める項目です。

制作途中で契約が終了するケースもあるため、その時点までに行った業務の報酬や成果物の取扱いを事前に決めておくことが重要です。

契約書では、例えば次のような事項を定めます。

  • 進捗分の報酬支払い
  • 成果物の帰属・利用可否
  • 損害負担の考え方
条文例

(中途終了)
第◯条 本契約が中途で終了した場合、甲は終了時点までの業務に応じた報酬を支払うものとする。

その他、地震・災害・感染症など当事者の責任によらない事由により業務の履行が困難となった場合に備えて、不可抗力条項を設けることもあります。
これにより、責任の所在や契約の取扱いを事前に明確にすることができます。

請負契約書を作成する際の注意点

請負契約書には決まった書式があるわけではありません。

しかし、インターネット上の雛形(テンプレート)をそのまま利用したり、契約内容を十分に検討しないまま契約を締結したりすると、後々トラブルにつながるおそれがあります。

特に請負契約書では、「完成」「検収」「修正」「責任」に関するルールを明確に定めておくことが重要です。

ここでは、請負契約書を作成・確認する際に特に注意したいポイントを紹介します。

テンプレートをそのまま使用しない

インターネット上には多くの契約書テンプレートが公開されています。

しかし、契約書は本来、それぞれの取引内容に合わせて作成すべきものです。

例えば、

  • Webサイト制作
  • システム開発
  • 動画制作
  • デザイン制作
  • 建築工事

では、必要となる条項やリスクが異なります。

テンプレートをそのまま利用すると、自社の取引に必要な条項が不足していたり、不要な条項が含まれていたりする場合があります。

そのため、雛形はあくまで参考資料として利用し、実際の取引内容に合わせて内容を調整することが重要です。

契約書本文だけでなく別紙の活用も検討する

請負契約では、成果物の仕様や作業内容が複雑になることも少なくありません。

そのような場合、契約書本文にすべてを書き込もうとすると、かえって内容が分かりにくくなってしまいます。

実務では、

  • 仕様書
  • 発注書
  • 要件定義書
  • 見積書

などを別紙として添付し、「本契約の一部を構成する」と定めることも一般的です。

特にWeb制作やシステム開発では、成果物の仕様を別紙で詳細に定めておくことで、完成基準や契約範囲を明確にしやすくなります。

追加作業や仕様変更のルールを決めておく

請負契約では、契約締結後に発注者から追加の要望が出ることがあります。

しかし、

  • どこまでが当初の契約範囲なのか
  • どのような場合に追加費用が発生するのか
  • 納期はどのように変更されるのか

が曖昧なままだと、トラブルにつながる可能性があります。

そのため、仕様変更や追加作業が発生した場合の手続きや費用負担について、あらかじめ契約書で定めておくことが重要です。

契約締結前の認識合わせを十分に行う

どれだけ契約書を整備しても、契約締結時点で当事者間の認識が大きく異なっていると、後々トラブルになる可能性があります。

例えば、

  • 発注者は「ここまで対応してもらえる」と考えていた
  • 受注者は「そこまでは契約範囲外」と考えていた

というケースは少なくありません。

そのため、契約締結前の打ち合わせや見積段階で、成果物の内容や業務範囲について十分に確認しておくことが大切です。

契約書は認識のズレを防ぐための重要なツールですが、契約締結前の十分な確認に代わるものではありません。

必要に応じて専門家へ相談する

請負契約書は、単に雛形へ情報を書き込めば完成するものではありません。

契約内容によっては、

  • 契約不適合責任の調整
  • 著作権の帰属
  • 損害賠償の範囲
  • 中途終了時の精算方法

などについて検討が必要になることもあります。

取引金額が大きい場合や、継続的な取引を予定している場合には、行政書士などの専門家へ相談しながら契約書を作成・確認することも検討するとよいでしょう。

請負契約に限らず、契約書全般で確認したい条項もある 

この記事では、請負契約書で特に重要となる項目を中心に解説しました。 

一方で、契約書には請負契約に限らず、多くの契約で共通して設けられる条項もあります。

例えば、

  • 秘密保持条項 
  • 不可抗力条項 
  • 損害賠償条項 
  • 反社会的勢力排除条項 
  • 協議条項 
  • 合意管轄条項

などです。 

これらの条項も、トラブルの防止やリスク管理のために重要な役割を果たします。

契約書の基本的な記載事項については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてチェックしてみてください。

まとめ

請負契約は、「仕事の完成」を目的とする契約です。

そのため請負契約書では、成果物の内容や完成基準、検収方法、修正対応の範囲、契約不適合責任などを明確にしておくことが重要になります。

特に、完成の定義や追加作業の取扱いが曖昧なまま契約すると、納期や報酬、修正対応などをめぐるトラブルにつながるおそれがあります。

また、インターネット上の雛形(テンプレート)は便利ですが、そのまま利用するのではなく、実際の取引内容に合わせて調整することが大切です。

請負契約書は、発注者と受注者の双方を守るための重要なリスク管理ツールです。

契約内容に不安がある場合は、専門家への相談も検討しながら、自社の取引に合った契約書を作成しましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の状況に応じたアドバイスではありません。

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