契約書を作ろうと思ったとき、
「何をどこまで書けばいいのだろう?」
と悩んだことはありませんか?
インターネット上には多くの雛形(テンプレート)が公開されています。
しかし、
「この内容で本当に大丈夫なのか」
「自社の取引にもそのまま使えるのか」
と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
実際、雛形をそのまま利用したことで、契約内容が実際の取引に合わず、後から認識のズレやトラブルにつながってしまうケースもあります。
契約書には法律で定められた決まった書式はありません。
しかし、契約の種類を問わず、多くの契約書で共通して記載される基本項目があります。
さらに、契約内容や取引の内容によっては、追加で検討したい条項もあります。
本記事では、契約書を作成する際に押さえておきたい基本項目と、契約内容に応じて追加を検討したい主な条項について分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- 契約書に記載しておきたい10の基本項目
- 契約内容によって追加を検討したい主な条項
- 雛形(テンプレート)を利用する際の注意点
この記事を読むことで、契約書に記載すべき内容を整理でき、自社の取引内容に合った契約書を作成・確認するための基本的な考え方が身につきます。

筆者について

ゆりぃ
医療系IT会社でデザイナーとして働く2児のママ。
2026年行政書士試験合格、現在開業準備中。
契約書・許可申請・起業手続きについて発信しています。
契約書に共通して入れておきたい基本項目

契約書には法律で定められた書式やフォーマットなどはありません。
そのため、インターネット上の雛形(テンプレート)を利用して契約書を作成することも可能です。
しかし、契約書に盛り込むべき内容を理解しないまま雛形を使用すると、自社の取引内容に合わない契約書になってしまうおそれがあります。
契約書を作成する際は、契約の種類(売買契約・業務委託契約・請負契約・賃貸借契約など)を問わず、多くの契約書で共通して記載される基本項目があります。
まずは、それぞれの役割やポイントを確認していきましょう。
1. 当事者の表示
契約の当事者を明確に特定するための項目です。
誰と誰が契約を結ぶのかを明確にしておかないと、契約の相手方が曖昧になり、後々トラブルになったり、権利の行使が難しくなったりするおそれがあります。
- 個人の場合:住所・氏名
- 法人の場合:本店所在地・法人名・代表者役職・代表者氏名
法人の場合は登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、個人の場合は住民票などの公的書類と表記を一致させることが重要です。
当事者の特定が不十分だと、代金請求や損害賠償請求などの法的手続を行う際に支障が生じる可能性があります。
2. 契約の目的
この契約が「何のための取引なのか」を宣言する項目です(一般的に第1条に置かれます)。
契約の目的を明確にしておくことで、契約全体の内容や各条項をどのように解釈すべきかの基準となり、当事者間の認識のズレを防ぐことにつながります
甲は乙に対し、〇〇の業務を委託し、乙はこれを受託する
契約条項の解釈に争いが生じた場合、この目的条項が契約全体の解釈指針として参照されることがあります。
そのため、取引内容を端的かつ正確に表現することが大切です。
3. 契約内容(業務・義務の範囲)
当事者がそれぞれどのような義務を負うのかを明確にする項目です。
契約書の中でも特に重要な部分であり、契約の対象となる業務の範囲を正しく定めておくことがトラブル防止につながります。
契約内容としては、一般的に以下のような事項を整理します。
- 業務の内容・範囲
- 当事者それぞれの役割や義務
- 業務の進め方に関する基本的な取り決め
「認識のズレ」が最も起きやすい項目です。
内容が多岐にわたる場合は、仕様書や発注書を別紙として添付し、「本契約の一部を構成する」と明記すると効果的です。
(業務内容)第2条 乙が前条に基づき遂行する業務(以下「本業務」という)の詳細は、次のとおりとする。
(1) 〇〇に関する企画および設計
(2) 〇〇の制作および納品
(3) 前各号に付随する一切の業務・・・・
2 本業務の詳細な仕様、納期および納品方法については、別紙仕様書の定めによる。
4. 報酬・代金
契約の対価となる金額を定める項目です。金額そのものだけでなく、以下の点も併せて定めます。
- 報酬額
- 消費税の扱い
- 実費(交通費・材料費等)の負担
- 追加作業の料金
- 支払遅延時の遅延損害金
「追加修正は無料だと思っていた」「交通費は別途請求できると思っていた」などの認識のズレを防ぐため、追加料金が発生する条件も明記しておくと安心です。
(委託報酬)
第3条 本業務の委託報酬は金〇〇円(消費税および地方消費税別途)とする。
2 追加業務が発生した場合は、甲乙協議のうえ別途報酬を定めるものとする。
5. 支払方法・支払時期
代金や報酬を「いつ」「どのように」支払うかを定める項目です。
以下の項目を合わせて定めるようにします。
- 支払方法(銀行振込・現金など)
- 支払期限
- 締日と支払日
- 振込手数料の負担者
- 分割払いの有無
- 着手金・中間金の有無
振込手数料の負担については、契約書で明記しておくことをおすすめします。
また、継続的な取引では「月末締め翌月末払い」などの支払サイクルを明確にしておくことで、資金繰りの見通しを立てやすくなります。
(支払方法)
第4条 甲は乙に対し、前条の委託報酬を、令和〇年〇月〇日(または「成果物の検収完了日の属する月の翌月末日」)までに、乙が指定する銀行口座に振り込んで支払う。なお、振込手数料は甲の負担とする。
6.契約期間
契約の開始日と終了日を定める項目です。
定めておきたい事項
- 契約開始日
- 契約終了日
- 自動更新(申し出がない限り1年間延長など)の有無
- 更新条件
- 更新拒絶の通知期限(例:期間満了の3ヶ月前まで)
(有効期間)
第5条 本契約の有効期間は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までとする。
2 期間満了の1ヶ月前までに、甲又は乙から書面による更新拒絶の申し出がない限り、本契約は同条件でさらに1年間自動的に更新されるものとし、以後も同様とする。
7. 契約解除
契約を途中で終了させる(解約する)場合の条件を定めます。主に以下の3パターンを想定して作ります。
- 催告解除:契約違反や支払い遅延があり、是正を求めても応じない場合に解除する
- 無催告解除(即時解除):破産、反社会的勢力との関与など、重大な事由があれば即座に解除する
- 中途解約:違反がなくても、一定期間前に通知すれば解約できるルール(任意)
(解除)
第6条 甲又は乙は、相手方が本契約の条項に違反し、相当期間を定めて催告したにもかかわらず、当該違反が是正されないときは、本契約を解除することができる。
2 甲又は乙は、相手方に次の各号の事由が一つでも生じたときは、何らの催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。
(1) 差押え、仮差押え、仮処分、または強制執行の申し立てを受けたとき
(2) 破産手続、民事再生手続の申し立てがあったとき
(3) 自ら振り出し、または引き受けた手形・小切手が不渡りとなったとき
8. 損害賠償
契約違反によって相手方に損害を与えた場合の責任について定める項目です。
契約書においては、損害賠償の範囲や上限を定めることも少なくありません。
定めておきたい事項
- 損害賠償請求の要件
- 賠償の対象となる損害の範囲
- 損害賠償額の上限
- 免責事項
損害賠償条項を設計する際は、「どこまで責任を負うのか」を明確にすることが重要です。
例えば、逸失利益(契約違反がなければ得られたはずの利益)まで賠償対象とするのか、通常損害のみに限定するのかによって、負担するリスクは大きく変わります。
(損害賠償)
第7条 甲又は乙は、本契約の履行に関し、相手方の責めに帰すべき事由により損害を被った場合、相手方に対し、直接かつ通常の範囲に限り、損害賠償を請求することができる。
2 前項の損害賠償額は、本契約に基づき甲が乙に支払った報酬総額を上限とする。
9. 合意管轄
万が一、話し合いで解決せず裁判(訴訟)になった場合、どこの裁判所で争うかを事前に決めておく項目です。
自社から遠方の裁判所を指定されると、交通費や弁護士費用がかさみ、実質的に裁判を起こせなくなるリスクがあります。
必ず「〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」と、自社に近い裁判所を指定しておきます。
(合意管轄)
第8条 本契約に関して甲乙間に紛争が生じた場合、〇〇地方裁判所(または「〇〇簡易裁判所」)を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
10. 作成日・署名押印
契約が「いつ成立したか」を証明し、当事者が合意した証拠を残す最終ステップです。
法人の場合は「代表者印(丸印)」、個人の場合は「実印」または「認印」を押印します。
近年普及している「電子契約」の場合は、電子署名等を利用することで、紙の契約書と同様に契約締結の証拠として利用できます。
その他の補助的・補完的な条項
その他、以下のような補助的・補完的な条項も、多くの契約書で定められています。
- 通知方法(連絡手段や通知の効力)
- 譲渡禁止(契約上の権利義務の第三者への移転制限)
- 存続条項(契約終了後も一定の条項が効力を持つようにするための規定)
- 協議条項(契約内容に定めのない事項について当事者間で協議するルール)
- 完全合意条項(契約内容が当事者間の最終的な合意であることを確認する条項)
契約内容によって検討される主な条項

前章で紹介した基本項目に加えて、契約の種類や取引内容によっては、さらに特別な条項を設けることがあります。
これらの条項はすべての契約に必要というわけではありませんが、契約内容によっては重要な役割を果たします。
特に業務委託契約や請負契約、継続的な取引契約では、以下のような条項の有無によってリスクの大きさが変わることもあります。
秘密保持条項
業務上知り得た情報を第三者に開示・漏洩しないことを定める条項です。
業務委託契約(請負契約・準委任契約など)、共同開発契約など、秘密情報を共有する契約で設けられることが多いほか、秘密保持義務のみを定める「秘密保持契約(NDA)」として単独で締結されることもあります。
業務委託契約や共同事業などで広く用いられます。
知的財産権条項
制作物や成果物に関する著作権などの帰属を明確にするための条項です。
請負契約のほか、ライセンス契約やコンテンツ制作契約など、知的財産が発生・利用される契約で重要になります。
特にWeb制作、デザイン、コンテンツ制作などで重要になります。
再委託条項
契約した業務を第三者に再委託できるかどうかを定める条項です。
請負契約や準委任契約などの業務委託契約で、受託者が第三者へ業務を委ねる可能性がある場合に検討されます。
品質管理や責任の所在に関わるため、事前の取り決めが必要です。
反社会的勢力排除条項
契約当事者が反社会的勢力に該当しないことを確認し、該当した場合には契約を解除できることなどを定める条項です。
企業間取引では契約の種類を問わず設けられることが多く、継続的な取引では特に重要です。
企業間取引を中心に広く導入されています。
不可抗力条項
地震・災害・感染症など、当事者の責任ではない事由によって契約の履行が困難になった場合の取り扱いを定めます。
業務委託契約(請負契約・準委任契約など)、売買契約など、履行まで一定期間を要する契約や継続的な契約で検討されることがあります。
リスク分担の観点から設けられることがあります。
契約書は契約の種類によって内容が変わる

ここまで紹介した10項目は、契約書に共通する「骨組み」となる基本項目です。
しかし実際の契約実務では、契約の種類や取引内容によって重視すべき条項が大きく異なります。
インターネット上の雛形(テンプレート)をそのまま利用することにリスクがあると言われるのは、自社の取引に特有のリスクが十分に反映されていない場合があるためです。
契約書は、共通項目をベースにしながら、取引内容に応じた特約条項を追加していくことで、はじめて実務で機能するものになります。
代表的な契約を例に、特に確認しておきたいポイントを見てみましょう。
1. 業務委託契約
業務委託契約は、事業者間で広く利用される契約の一つです。
業務委託契約には、「成果物の完成」を目的とする請負型と、「一定の業務の遂行」を目的とする準委任型があります。
例えば、Webサイト制作やシステム開発は請負型、コンサルティングや顧問契約は準委任型として扱われることが一般的です。
業務委託契約で特に確認したいポイント
請負型の場合
- 納期
- 検収条件(納品物を受け入れる基準)
- 契約不適合責任(納品後に欠陥や不具合が見つかった場合の責任)
準委任型の場合
- 業務範囲
- 報酬に含まれる業務内容
- 中途解約に関するルール
同じ「業務委託契約」であっても、契約の性質によって重視すべき条項は異なります。
2. 売買契約
商品や設備、サービスなどを売買する際に利用される契約です。
売買契約で特に確認したいポイント
- 商品の引渡時期
- 代金の支払条件
- 契約不適合責任(商品に不具合があった場合の対応
- 所有権が移転するタイミング
- 運送中の事故や破損に関する責任の所在
特に高額な商品や継続的な取引では、リスクの分担方法を事前に定めておくことが重要になります。
3. 秘密保持契約(NDA)
取引の検討段階や共同プロジェクトを進める際に締結される契約です。
秘密情報の漏えいを防ぎ、安心して情報共有を行うことを目的としています。
秘密保持契約(NDA)で特に確認したいポイント
- 秘密情報の定義
- 情報の利用目的
- 第三者への開示制限
- 契約終了後の守秘義務
- 情報の返還・廃棄方法
「何が秘密情報に該当するのか」を明確にしておかないと、後々トラブルになる可能性があります。
共通項目をベースに必要な条項を追加する
このように、契約書は共通項目だけで完成するものではありません。
取引内容によって想定されるリスクは異なるため、それぞれの契約に応じた条項を追加・調整する必要があります。
契約書を作成する際は、
- どのようなトラブルが起こり得るか
- 自社が特に避けたいリスクは何か
という視点から内容を検討することが重要です。
まとめ

契約書には法律で定められた統一フォーマットはありませんが、多くの契約書に共通する基本項目があります。
まずは、
- 当事者の表示
- 契約の目的
- 契約内容
- 報酬・代金
- 支払方法
- 契約期間
- 契約解除
- 損害賠償
- 合意管轄
- 作成日・署名押印
といった基本項目を押さえることが、契約書作成の第一歩です。
また、契約内容によっては、秘密保持条項や知的財産権条項、再委託条項、反社会的勢力排除条項などを追加で定める必要があります。
重要なのは、インターネット上の雛形(テンプレート)をそのまま利用するのではなく、自社の取引内容や想定されるリスクに合わせて内容を調整することです。
