前回の記事(「フリーランス新法とは?Webデザイナーなど、フリーランスへの影響を解説」)では、フリーランスを守るために施行された「フリーランス新法」について解説しました。
しかし、法律はあくまで最低限のルールです。
実際の仕事では、
- 修正は何回までか
- 著作権は誰のものか
- 途中でキャンセルされたらどうするか
といった細かな取り決めまでは法律が決めてくれません。
こうしたルールを決めずに仕事を始めると、思わぬトラブルにつながることがあります。
この記事では、契約書がないことで起こりやすい6つのトラブルと、契約書がなぜ必要なのかをわかりやすく解説します。
読み終わる頃には、「自分の仕事にはどんな契約条項が必要なのか」が具体的に見えてくるはずです。

筆者について

ゆりぃ
医療系IT会社でデザイナーとして働く2児のママ。
2026年行政書士試験合格、現在開業準備中。
契約書・許可申請・起業手続きについて発信しています。
フリーランスによくある6つのトラブル

トラブル① 報酬の未払い・減額
「納品したのに入金されない」
「後から予算が厳しいと言われて報酬を減額された」
契約書や発注書がない場合、報酬額や支払条件について認識の違いが起こりやすくなります。
もちろん、契約書がなくてもメールやチャットのやり取りが証拠になる場合はあります。
しかし、条件が曖昧なままだと、報酬を請求する際に不利になる可能性があります。
フリーランス新法では報酬の支払期限についてルールが定められていますが、まずは「何を、いくらで受けた仕事なのか」を明確にしておくことが重要です。
トラブル② 修正が際限なく続く
「あと少しだけ修正してほしい」
その一言が何度も続き、気づけば当初の想定を大きく超える作業量になっていた。
Webデザイナーやクリエイターには非常によくあるトラブルです。
修正回数や修正範囲を決めていないと、
- どこまでが契約内の対応なのか
- どこからが追加作業なのか
の判断ができません。
契約書で無料修正回数や追加費用の基準を決めておくことで、防げるトラブルです。
トラブル③ 納品後に「イメージと違う」と言われる
「思っていたものと違う」
「もっとこういう雰囲気だったはず」
制作物の仕事では珍しくありません。
事前に仕様や要件を明文化していないと、どちらの認識が正しかったのか判断できなくなります。
契約書や仕様書に、
- 制作内容
- 納品物
- 検収方法
を記載しておくことで、「何をもって完成とするか」を明確にできます。
また、一定期間連絡がなければ検収完了とみなす「みなし検収条項」を設けることで、納品後の長期対応も防ぎやすくなります。
トラブル④ 著作権・利用範囲をめぐるトラブル
「納品したデザインが別の用途でも使われていた」
「勝手に改変されていた」
制作物には著作権が関係します。
法律上は、原則として著作権は制作した人に発生します。
しかし実務では、「お金を払ったから自由に使える」と考える発注者も少なくありません。
契約書で、
- 著作権を譲渡するのか
- 利用許諾だけなのか
- 利用できる範囲はどこまでか
を決めておくことで、後々のトラブルを防げます。
トラブル⑤ キャンセル時にそれまでの報酬がもらえない
制作途中で、
「今回は中止になりました」
と言われるケースです。
契約内容によっては、それまでの作業分について報酬を請求できる場合もあります。
しかし、契約書がないと、
- どこまで作業したか
- キャンセル時にどう精算するか
が曖昧になりやすくなります。
途中解約時の精算方法を事前に決めておくことが大切です。
トラブル⑥ 信用できない取引先とのトラブル
契約書を嫌がる相手や、条件を曖昧なまま進めようとする相手には注意が必要です。
契約書の締結プロセスは、
「取引条件をきちんと確認する意思があるか」
を見極める機会にもなります。
また、契約書に反社会的勢力排除条項(反社条項)を設けておくことで、万が一問題が発覚した際の対応もしやすくなります。
なぜ口約束だけでは危険なのか

「信頼している相手だから大丈夫」
そう思っていても、トラブルは悪意だけで起こるわけではありません。
理由① 証拠がなければ権利を主張しにくい
報酬額や納期、業務範囲について証拠が残っていなければ、
- 行政機関への相談
- 交渉
- 法的手続き
のいずれにおいても不利になる可能性があります。
契約書は、トラブル時のためだけでなく、「何を約束したのか」を確認するための記録でもあります。
理由② 相手の事情で約束が変わることがある
- 担当者が退職した。
- 上司の承認が下りなかった。
- 会社の方針が変わった。
こうした事情で、最初の約束が守られなくなることがあります。
書面がなければ、「そんな話は聞いていない」で終わってしまう可能性があります。
理由③ 書面があることで認識のズレを防げる
契約書は、トラブルが起きた後のためだけに作るものではありません。
業務範囲や納期、報酬などを事前に確認することで、「そんなつもりじゃなかった」という認識のズレを防ぐ役割があります。
契約書があることで、お互いが同じ条件を確認したうえで仕事を進められます。
フリーランス新法があっても契約書が必要な理由

フリーランス新法によって、フリーランスを守るルールは大きく強化されました。
しかし、新法だけですべてのトラブルを防げるわけではありません。
新法の対象外になる取引もある
例えば、
- 個人からの依頼
- 従業員のいない個人事業主同士の取引
などは、新法の対象外となる場合があります。
身近な相手ほど契約書を省略しがちですが、後々トラブルになることも少なくありません。
実務のルールまでは法律が決めてくれない
法律では、
- 修正回数
- 著作権
- キャンセル料
- 追加費用
- 検収期間
までは決めてくれません。
これらは契約書で定める必要があります。
トラブルと契約条項の対応表
| 起こり得るトラブル | 契約書で決めておきたい内容 |
|---|---|
| 未払い・減額 | 報酬額・支払期日 |
| 終わらない修正 | 修正回数・追加費用 |
| イメージ違い | 仕様・検収条件 |
| 著作権トラブル | 著作権の帰属・利用範囲 |
| 途中キャンセル | 解約時の精算方法 |
| 信用トラブル | 暴力団排除条項 |
用途に応じた契約書ごとに、起こり得るトラブルを予測し、その防止のための条項を設けるようにしましょう。
まとめ

契約書は、相手を疑うために作るものではありません。
お互いの認識をそろえ、お互いを守るために作るものです。
フリーランス新法によって最低限のルールは整備されましたが、実務の細かな取り決めまでは法律がカバーしてくれません。
そのため、報酬や修正対応、著作権、キャンセル時の精算など、自分の業務に関わるルールを契約書で明確にしておくことが重要です。
「契約書なんてまだ早い」と思っている段階こそ、実は一番必要なタイミングかもしれません。
安心して仕事を続けるためにも、自分の業務に合った契約書を整えておきましょう。
